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「何よ、海翔がうまく誤解を解けないだろうと思ってなのに」 今度は、凄く呆れたような口調で言ってくる。 「もう、誤解は解けた。 良いから、早く帰れよ!」 それには、 すかさず海翔がリカさんの腕を掴んで、帰るように促し始めた。 「解ったから。手、離してよ。痛いから」 「解ったよ」 海翔が掴んでた手を渋々離すと、 海翔から離れて入り口に向かうリカさん。 そこへ、 割り込むようにして… 海翔のスマホの着信音が鳴り響いた。 「っなんだよ? あぁ、颯介さん、連絡しなくて、ごめん」 苛立った声を発した海翔が 画面を覗いて相手を確認すると、 舌打ちをしながら耳に当てて話しを始めた。 私は、ただ呆然と立ち尽くして見ていることしかできない。 「ねぇ?芽依ちゃん」 そんな私の前をリカさんが通り過ぎ様に、 「海翔の相手してもらってごめんね? あたし達、高校の頃からの付き合いなんだけど、今までも、こいうこと何度かあったの。 あたしが仕事で忙しくて会えないから。 どうせ、直ぐに…あなたのことも飽きると思うけど。それまで宜しくね?」 私の耳元でそう囁いたリカさんの顔は、 怖いくらい綺麗な笑顔だった。 「そうだ、良いこと教えてあげる。海翔、ご奉仕されると凄く喜ぶの。 芽依ちゃんには、ムリだろうけど。 じゃぁ、またね、芽依ちゃん」 何も言わず立ち尽くす私に、 綺麗な笑顔を向けると帰っていった。 まるで、嵐が去った後のように。 私の心を掻き乱したまま……。
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