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いつものように… 自動ドアを潜り抜けて、 海翔が居るであろう診察室へと向かった。 海翔をビックリさせようと思った私は、 声を潜めて、足音も忍ばせるようにして…、 静かにドアを開けたのだった。 ……それなのに、 診察室のドアを開けたその先には、 デジャブのように… こちらに背中を向けた長身の海翔の身体には、 艶かしいしなやかな腕と身体が絡められていて。 海翔の肩越しには、 目が覚めるぐらい綺麗な大人の女の人の顔が少しだけ見えていた。 そして、 その綺麗な瞳が、 強い視線で私を射抜くように凝視している。 なのに…… どうしてだろう? 見たくなんかないのに……。 その場で、 縫い付けられたみたいに、動くことができない。 まるで、 蛇に睨まれた蛙のように、 一ミリたりとも身体が動いてくれない。
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