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「ねぇ? いつまで見てる気? もしかして診察?」 静かな診察室に、 突然、響き渡る女の人の苛ついたような冷たい声。 それに反応して振り返るために動く海翔の後頭部。 その声に、 ハッ…とした私は、 何も言えないまま、 海翔の顔が見える前に、 逃げるようにして診察室を飛び出した。 「芽依っ!」 って、大きな声で海翔が私の名前を呼ぶ声からも逃げるようにして。 さっきまで、 動けなかったのが嘘のように。 薄暗くなって、 より一層…寒く感じられる 冬の冷たい風が吹き抜ける中、 ただただ必死で闇雲に走り続けた。
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