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「……そんなことで来たのかよ。 もう会わないって言ったよな? それに動物臭いのイヤじゃなかったのかよ?」 芽依じゃなかったことに落胆した俺は、 思った以上に冷たくて低い声を放っていた。 「だって、何度かけても電話に出てくれないから来るしかないじゃない。 ねぇ?どうしちゃったの?」 そんな俺にも構うことなく、 近づいてくると、当たり前のように俺の首に腕を回して、 甘えるようにして、甘ったるい声で擦り寄ってくるリカにイラっとくる。 俺の言葉、聞いてんのか? いっつもコイツは、 そうやって自分のペースで話しを進めて、うやむやにしようとするんだ。 「やめろって。もう終わりにするって言ってんだろ?」 リカの身体をかわして距離をとりながら、苛立ちをぶつける俺に、 「それって、"芽依ちゃん"っていう彼女ができたから?」 離れた分だけまた近づきながら、 今度は芽依の名前を出してきたリカ。 何でコイツが知ってるんだ? それに、何が言いたいんだ? 俺は一瞬…顔をしかめて考えた。 その結果、一つの考えに行き着いた。 あぁ、颯介さんに聞いたのか。 知ってるんなら話しが早い……単純にそう思った。 「あぁ。 だから、お前も男とうまくいってんなら…そういうのやめろ」 「海翔のことが好きだから続けたいって言ったら?」 それなのに、 リカの口からは、 俺の意表をつくようなモノが飛び出してきた。 「……は!?」 そんな、 間抜けな声しか出てこなかった。
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