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暫くしてお店に戻ってきた颯介さんに見送られ私たちはお店を後にした。 「芽依、どうかしたのか?」 助手席からぼんやりと流れていく街の灯りを眺めていると、 運転席の海翔から心配そうに声をかけられた。 なんにも言わずに窓の外ばかり眺めてしまってたからだろうと思う。 「…え?どうもしないよ?」 「そうか」 「うん」 そうは答えたけど、本当はずっとしのさんのことを考えてしまってた。 海翔は、 『また一人になるんじゃないかって怖くて堪らない』って時々言うけど。 それって、 しのさんが颯介さんと結婚して、 それまで家族のようにいつも一緒にいたしのさんを失った時のことを言ってるんじゃないのかな? お姉さんもモデルさんをしてたから、いつも一人だったって言ってたし。 だとしたら、 今でも海翔の心の中には、しのさんが居るのかもしれない。 きっと海翔にとって、 しのさんは颯介さん同様、特別な存在なんだろうから……。 だったら、 年も一回りくらいは離れてるようだし、 恋愛感情じゃなかったのかもしれない。 私がそう思いたいだけなんだけど……。 でもそんなに長い間、 海翔はどんな想いでいたんだろう? 前に、 『傷つくのがイヤで、酷いことばっかしてきた』って言ってたように、 ただ、そういう寂しさを誰かと肌を重ねることで誤魔化してきたのかな? そのことで今も自分を責めてばかりいるなんて、 …そんなの切な過ぎるよ……。
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