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*海翔side*
めいっぱい、
腕に力を入れすぎたせいで、
身を捩って身体の向きをこちらに向け、
俺の胸に軽く両手を押しあてながら、
「…海翔、苦しいよ」
って、流した涙で睫毛と頬を濡らしたまま、
腕の中から、俺に上目遣いで真っ直ぐに訴えかけてくる芽依。
やっと、
俺と目を合わせてくれたことに…
いつもの芽依に戻ってくれたことに、
張り詰めていたものが解け、ホッと安堵の息が漏れた。
身勝手な俺は、
「……あぁ、ごめん。
でも、まだ離してやんねぇ。
芽依の抱き心地半端ねぇんだよ。
スッゲー…あったけぇし、
ちっさくて、柔らけぇし、
スッゲー…癒されんだよ」
我が儘な子供のようなことを言って、
芽依を腕の中に閉じ込めたまま抱きしめ続けた。
そんな、
どうしようもない俺に…
「ヤダ。…なんかそれって…猫みたい」
ムッとした表情をして、
拗ねた口調で言ってくる芽依を見ているだけで、
……強張ってた筈の頬が自然に緩んでいく。
思えば芽依に出逢ってからずっとそうだった。
こうやって、
いつも…しのさんのことだけじゃなく、
嫌なことを何もかも忘れさせてくれたんだ。
どこにもぶつけようのない感情に押し潰されそうになったときも、
なんとか自分を見失わずに済んだんだ……。
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