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でも、
そうやって動くことは自然なことで、
この一月の間、芽依がそうやって動く度に期待して、
そして何度もその度に裏切られてきた。
そうは思いながらも、
もしかしたら今度こそ目を覚ますかも知れない…
目を覚まして欲しい…
出逢った時のように、
どんぐりまなこで俺のことを見て欲しい…
とびきりの笑顔を見せて欲しい…
いつもの明るい声を聞かせて欲しい…
いつものようにその声で一杯甘えて欲しい…
そしたら、
芽依がもう良いって言うぐらい、
これでもかってくらいに…トロットロに甘やかしてやるから……。
「あ!また動いたぁ!」
「うるせぇよ……。
聞こえてるから、声のボリューム下げろよ?
芽依がビックリすっだろ。バーカ…」
「ちょっと、なに、いい歳した男が泣きながら文句言ってんのよっ!
バカねぇ?
それに、あたしのお陰じゃないの?
刺激になったのよ~。
お姉さまに感謝しなさいよねっ!
あー、もう、あんたの涙がうつったじゃないのよっ!」
そんな姉さんの騒がしい声の響くなか、
俺は瞬きも惜しんで芽依の寝顔を見つめ続けていた。
この一月の間、
願い続けてきたその瞬間が叶ってくれることだけを祈って……。
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