955人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだよ、バカはないだろ?
それに、こんなとこで恥ずかしいってことは、病室帰ったらどんな厭らしーこと言っても、しても良いのかよ?」
私の言葉を聞いた海翔が、少しだけムスッて口を尖らせながら文句を言ってきた。
「だって、恥ずかしいものは恥ずかしいからしょうがないじゃない。
人のアゲアシとらなくても良いじゃない……」
それに速攻で文句を返せば、
「アゲアシだってとりたくなるって。
リハビリ始めてからずっと元気ねーし。
俺にまで無理して仮面みたいな作った笑顔貼り付けてるし。
挙句、俺のためだかなんだか知んねぇけど『結婚なかったことにしよう』って言ってくるし。
さっき芽依にそう言われて、俺がどんな気持ちだったか解ってんのかよ?
芽依が本気で言ってたらどうしようって……不安でしょうがなかったんだからな」
艶っぽい瞳が途端に悲しげなものに変わって、
ギュってきつく胸に引き寄せられたと思ったら、
私の身体を腕の中に掻き抱くようにして閉じ込められてしまった。
途端に、
フワリと海翔の匂いとあったかい温もりに包まれて、
海翔の想いが伝わってきたからか、
涙腺が緩んでじわりと涙が滲んでくる。
最初のコメントを投稿しよう!