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確かにこれは俺のだけど、別にそんな急いで走ってくる程大事な物じゃないし、今日の予定ぐらい頭入ってるから。
と、声に出して言いたいのだが今の俺は“アイドル 飯波羅智”なので喉元まで出掛けた不満をグッと抑え、口を開こうとした時
「あっ、もしかして羅智君のじゃ無かった?」
“私と羅智君の席の間に落ちてたから、てっきり羅智君のだと思ったんだけどなぁ”と、苦笑いをしながら言った。
俺が紙を見ながら考え事をしていて、言葉を発さなかったからきっと俺がこの紙に見覚えがないとでも思っているんだろ。
「いや、これ僕のだよ。大事な今日の予定なんだ。ありがとう、苺実ちゃん」
「おおっ!そっかぁ!良かったぁ、渡せて!でもでも、お仕事のスケジュールを自分で管理してるなんて凄いねぇ!私なんかマネージャーが管理してるのを前の日に聞いて把握するって感じだからびっくりだよっ!」
…こいつのマネージャー可哀想。
マネージャーが管理していても、自分でも把握し管理するのは当たり前の話だろ。馬鹿か。
苺実は話しながら靴を履き替え、羅智の隣に並び歩き出す。
と、ストロベリーのマシンガントークを適当に相槌を打ちながら聞き流していると
「ねぇねぇ羅智君!今日15時まで時間大丈夫?良かったら、この後美味しい抹茶のアイス屋さん知ってるんだけど行かない?」
「…ごめんねっ、苺実ちゃん!今日は予定ギリギリで入ってて…また今度、誘って」
本当は嘘だ。今日の予定は9時~入学式、しか無い。
うちのマネージャーが今日は学生の大事な日だからと仕事を入れないでいてくれた。…そんな事しなくても大丈夫なんだけど、心配症のマネージャーだからな。
顔の前で両手を合わせ、申し訳なさそうな顔をすると苺実は少しの間の後“そっか!”と納得し
「お仕事じゃ仕方ないもんねっ、頑張ってね!」
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