劣等と優等

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だが、青年は途端に少女にナイフを突き刺す。ズボンのポケットに仕込まれていたであろう、真新しい凶器。 一撃で少女の心臓を貫き、煉は地面に崩れ落ちた。青年は其れを視て何度かナイフを抜き刺しし、凄いけんまくで奇声を発して煉を睨み付けている。 何が起きたのか、暗幕に覆われて行く視界の中で少女が見たのは恨みを込めた自分と同じ眼。 青年は言った、幼なじみを殺した罪を償えと。彼は先程の燐の親友だった、そして何より彼女を密かに愛していた。 其れを悟り、煉は静かに眼を閉じる。けれど、青年はその場に立ったまま動かなくなった。 ――やがて一週間が経ち 皆は事件を忘れ、平穏に暮らしていた。だが青年は帰って来ても、浮かばれない表情をしてずっと後悔した。 幼なじみを救えず、挙げ句には人を殺した。罪は永遠に消えない、何時かは償える日を信じ彼は涙を流す。 「……煉、ごめん」 青年は微笑し、写真を眺めながら眠りについた。その傍に彼女が泣きながら立っているのも知らず、永久に眠った彼。 机の中には、空になった小瓶が残されていた。
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