劣等と優等

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「私は、綾白燐。煉だよね?」 「えぇ、何度か私とコンタクトしてきたわよね。知っているわ、会えて嬉しい…でも…ね」 彼女は妖しげに笑う、そして後ろに隠していた手から持っていた者を取り出す。ギラリと光る刃先に、思わず凍り付く煉の表情。 何故失踪し、彼等は消えて行くのかその真相は少女だけが知る。けれど目の前に横たわる彼女は、もうピクリとも動く事は無いのは確か。 燐は背を刺され、出血して地面に倒れていた。鮮血は少女の紫の髪を紅く染め、よりいっそう妖艶さを増している。 「クスクス、私はこれで良いの。誰も寄せ付けない、人類を消す為にね」 「えぇ、そうね私?これが正しい事。何一つ間違ってはいないのだから」 皮肉に少女は、燐を蹴飛ばして笑う。そして人間何て嫌いと、言葉を吐き捨てた。 煉は灯籠の明かりを灯し、其れを空中に浮かばせながら妖艶に微笑する。 死んだ彼女の頬を撫で、ライターで火を点けて死体ごと抹消を図った。 手に伝わる熱が熱い、けれど少女は自身の片手が焼け跡を作るまで離さずただ燐を見つめ続ける。 顔をしかめ、もう一人の彼女が少女の手を優しく握って笑った。 灯された明かりから、周りにある夥しい数の死体が転がっているのが見えた。 ある者は骨に、又は目玉さえ抉られて捨てられている。 どれも残酷なまでに、酷い有り様だ。彼女はそれらを見下ろすと、ため息を吐いて苦笑を浮かべた。
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