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「ン、んー…」
逃げようにも慣れない着物に自由を奪われ、それは叶わなかった。
腰にグッと手を回され、あごにもしっかりと指が添えられている。
いきなりのキスに上手く呼吸をすることが出来ず、その息苦しさにギュッと目を瞑ると、唐突に唇を割って入ってきた舌が、あたしの歯列を妖しげになぞった。
酸素を奪われるだけのキスは、腰に力が入らなくなるまで続いた。
「ふふふ、大丈夫ですか?」
「どういうつもりですか…」
銀糸を垂らした唇がわずかに離れる。
蓮池さんはあたしの腰に手を添えたまま、吐息がかかる位置でフッと笑みを零した。
厭らしく口角をつり上げた笑い方は見せつけるような余裕を孕んでいて。あたしがどんな反応をするのか楽しんでいるように見える。
だからこそ突然のキスに動揺してやるつもりはなく、あくまで冷静に、目の前にある憎たらしい顔を睨みつけてやった。
というより、狼狽えたら負けだと思った。
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