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たぶんあたしがケアを必要とするくらい悩んでいると思ったのだろう。響は心からすまなそうに言葉を濁すが、でも実際はそこまで悲観的でもなかった。
蓮池さんのプライベートジェットはそれなりに快適だったし、訪れたホテルだって、辺り一面コバルトブルーの海に囲まれていて、うっとりするほどだ。
蓮池さんも今は挨拶巡りで席を外しているが、でもホテルへ着くまでの彼は何だかんだ紳士的だったし(あたしとの結婚を"どうせ"扱いしたわりには)優しさだってみえた。
会話の節々で顔を出した棘はご愛嬌だ。
それだけ気を使わないくていい関係、というところだろうか。
「つか、なかなか戻ってこねぇな?蓮池さん」
ふと響が辺りを見渡しながら言った。
到着してすぐに通されたフロアでは、ホテルの完成を祝う立食パーティーが行われている。
足元の白を基調としたタイル。アレンジの効いたナプキンや料理で彩られたテーブルセッティング。海に面した壁は全面ガラス張りになっていて、食事をしながら景色を楽しめる造りになっていた。
あたしは冷えたシャンパングラスを傾け、
「さぁね」
短く答える。
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