Act.4 無意味に色づく赤い花

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  「言葉の通りですよ。涼華さんの腹黒い性格も、自意識過剰なところも、すべて承知の上ってことです」 「は…、じゃあ、姉の救いようのない性格を知っていて、わざわざ見合いの話を受けたっていうんですか?」 「それを言ったら私だって救いようのない性格してますから」 「え?」 「私も知らなかったんですよ。涼華さんが見合いの相手だって」 「知らなかったって…」 「興味なかったんですよね。政略結婚の相手なんかに。それがきっかけで意気投合?みたいな」 ですよね?と、爽やかな笑顔であたしに同意を求めてくる蓮池さん。響なんて、清々しいほどの開き直りっぷりに言葉を失っている。 あたしはハァとかぶりを振って、隣で化石になっている響を呆れたように見やった。 さすがは蓮池さん。腹黒い性格をしているだけのことはある。まさかあたしと梓以外に、響にダメージを与えられる人間がいるとは思わなかった。 しかし、だ。 「ちょっと蓮池さん、誤解を招くような言い方しないで下さる?」 「誤解?」 「えぇ。あなたの前で猫をかぶる気はありませんけど、でもそれ以上は見せるつもりも教えるつもりもありませんから」 「キスした仲なのに?」 「無理やりしておいてよく言うわ」 「はは、無理やりだなんて傷つくな」 「事実じゃありませんか」 ツン、とそっぽを向くと、クスクスと楽しげな声が追いかけてくる。
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