Act.4 無意味に色づく赤い花

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  「…ちょっと待った」 あたしとしては引いた一線を示せればそれで良かった。 いずれ一緒に歩んでいく未来も、それは家柄の上に敷かれたレールを歩かなきゃいけないからだ。恋愛感情は存在しない。 しかし、響にとっては軽く受け流せる会話ではなかったらしい。 「あの、キスって…、もしかしてすでにそういう仲なんですか?」 「は?」 遠慮がちに聞いてくる響をあたしはシレッとした目で見やった。 大きく見開かれた双眸は信じられないと言わんばかりにあたしたちを映している。まぁ弟として、姉の色事なんて聞きたくないんだろうけど(ましてや響はあたしの気持ちを知っているわけだし)でも見当違いな物言いにはホトホト呆れてしまう。 「んなわけないじゃない。無理矢理されたって言ったでしょ?あんた今まで何聞いてたの?」 「いやいや平気な顔して言う事か!?」 「口を慎みなさい、響」 そう言って、タメ息混じりに響を見やる。 あたしたちの周りでは様々な企業から参加した代表たちがシャンパングラスを片手に、今日のセレモニーを楽しんでいるのだ。 中には"叶"の傘下に籍おいているグループの代表だっている。 頂点に立つ者として、付け入る隙を与えるのも、見せるのも、絶対に許されることではない。 思いがけず"素"をあらわにした響をすかさず制すと、響もあたしが何を言わんとしているのか察したのだろう。うっと言葉を詰まらせた響は、それでも厳しい表情のまま唇を引き締める。
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