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慣れた手つきで煙草を取り出し、唇に咥える。そして葉の詰まった先へ火を灯すと、気品漂う部屋には朧げな紫煙が筋を描いた。
独特のフレーバーを肺いっぱいに吸い込み、ゆっくりと吐く。
婚約披露パーティーまでは、もうすでに一時間を切っている。
たまたまヘアメイクの様子を見にきたスタッフの話では、蓮池さんもすでに別室で準備を終えているらしい。
いよいよか…
と、まだ身丈の残る煙草を灰皿へ押しつけたとき。
「淡い色のドレスもなかなか似合いますね」
さすがは涼華さんだ、と。
控室の扉が開かれるのと同時に、見知った声が静けさを乱した。
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