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「あ…、なに?」
「何じゃねぇし」
グッと眉を顰めた響は交差させた足を組み直す。
その無駄に長い足を組み直す仕草は偉そうだが、キレイな顔のおかげかムカつくほど様になっている。
「…断れよ?」
疑り深くあたしを見つめてくる響はその瞳に鋭さを込めるが、あたしが言葉を返すより先にガチャ…と、リビングの扉が開いた。
あたしも響も音のあったほうへ視線を向けると、そこにはおぼんにティーカップを乗せた幸枝さんとスーツ姿の父が立っている。
「久しぶりだな。涼華、響」
低いバリトンがあたしたちの鼓膜を揺らす。
厳格な雰囲気をまとう父に、自然と喉が絞まる思いをするのはいつものことだ。
父はテーブルを"コの字型"に囲んでいるソファのひとつへ腰を下ろすと、おもむろにスーツの内ポケットから煙草を取り出して咥えた。
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