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Act.2 臆病な心と強がりな心
夜は別々の部屋で眠り、始発が動き出す前にマンションまで送ってもらった。
当然だが、一人暮らしの梓の部屋にベッドはひとつしかない。他人に立ち入られることを嫌う梓が客用の布団を常備しているはずもなく、夜はどちらがベッドを使うかで喧嘩になった。
普通なら女性へ譲る場面でも、梓にそういう常識は通用しない。
結局、5回程ジャンケンを繰り返し、何とか"勝ち"を納めたあたしがベッドをもぎ取った。
翌朝、ソファで一晩過ごすことになった梓からはめちゃくちゃ文句と嫌味を言われたけど。
「何なら押し倒すくらいしてやればよかったのに」
「…アンタとあたしを一緒にしないでちょーだい」
梓と一夜を共にし(中身は呆れるほど健全なものだったけど)その二日後のランチで響に言われたのが今のセリフだった。
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