葵と音楽とギター

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西に向かう太陽は、何かを言いかけたかのように、水平線にしがみつく。絞りたての空は色を変えていき、ハミングを重ねるように一番星を掲げていた。 同じく部屋の窓から射し込む光が、葵の心を察するように、柔らかく手を伸ばす。住み慣れた場所から流れる音楽は、葵の世界を彩った。ただゆっくりとゆっくりと。 エレキギターを取り出て、チューニングを始めて、音が合うと思いっきり一回ダウンストロークした。部屋に鳴り響くギターの音は、少しずつ壁に染み込んでいった。 「これでえぇな。さて、練習しよ」 譜面を広げて、先ずはにらめっこ。 コードの流れを頭に叩き込んで、流れている音楽に合わせてギターを弾いていく。決して上手くはないのだが、とりあえず曲全体の流れを把握した葵はとにかく無性に何度もかき鳴らした。 間違えたり、引っかかる場所はいつも決まっている。バレーコードだ。 「押さえるのに時間がかかるねんな。一発で押さえられへんといかんねん」 こればかりはひたすら練習するしかない。指先が痛くなっても弾き続ける葵は、周りの事など眼中にない。あるのは目の前の譜面、耳から聴こえる音楽のみ。 「ゆっくりだけど、少しは弾けるようになったかなぁ……時間も時間やし、ここら辺で止めとこ。また明日やな」 外は知らぬ間に時を進めて、外灯が無人の道路を照らしていた。 ギターを磨いてソフトケースにしまうと、ふとエレアコにも目が行ってしまった。 「あかん、キリないわぁ」 弾きたいなぁという欲を押さえて、ゲームにいそしむ葵だった。
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