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崩壊寸前の淀んだ空を見上げ、早く帰った方がいいと判断した葵は、歩数を増やして自宅に向かう。
暫くするとポツポツと、有り難くない天の恵みが落ちてきた。
「それにしても、最近の天気は当たらんなぁ」
出かける前にチェックした天気予報は昼までは晴れの予報だった。時間を確認すると、まだ午前10時だった。欲しかったCDを購入しに出掛けた葵は傘を持っていなかった。
「とにかく、はよ家に帰らんと。コンビニで傘を買う余裕ないねん」
スタスタと歩みを進める葵だったが、待ちかまえてる信号機に引っ掛かってばかりだ。こういう時ほどありがちな罠にハマる。
「日曜の朝なのに、車の通りが多いなぁ。やっぱ自転車で行くべきやったかなぁ」
葵は何処に行くのも歩いていくのが習慣だった。自転車はもちろん乗れるのだが、何故か逆にめんどくさく感じているのだ。歩いた方が体にも良いのも理由の一つだった。
「そう言えば、義兄さんに葵さんの一家は、歩くの早いですねって、言われた事があったなぁ。ウチ普通に歩いているだけやのに」
これは父親に原因がある。父親はとにかく歩くのが速い。家族はそのペースについていかなければいけないので、必然的に一家の歩くスピードが速くなったのだ。
「ウチのせいじゃない。はよ帰ろ」
多少は濡れてしまったが、何とか家に着いた葵が外を見ると、雲は切れて明るい日差しが射していた。
「やっぱ雨女のレッテルは剥がれんなぁ……」
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