長雨の夜に

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夜空は雨雲に覆われて、テーブルの上のグラスゆっくりと倒れるように、一瞬の間が世界を包んでいた。 深夜0時を回り、葵は眠気にも襲われながらも、立ち上げた小説のコンセプトを考えていた。 「主人公が私で良いのかな?でも、ノンフィクションのカテゴリなら、書けるかなぁ?」 そんな事を思いつつ、相も変わらず書く内容に困っていた。 と言うのは、平凡な日々が続き、特に面白い事がなかったからなのだ。 ふと部屋の中を見回すと、昨日買ってきたビスコがあった。 「ビスコはすごいねんな。乳酸菌が1億個もはいってるんや!誰がどう数えたんやろ?」 うたい文句は、おいしくて強くなる。 何がどう強くなるか分からないが、少なくとも美味しいのであれば何でも良いやと思う葵。 「子供の頃は沢山食べていたなぁ。大人になってからはサッパリ食べてなかったからな」 ビスコの箱を空けて、バリバリと食べ始める。やっぱり美味しいなぁと思う反面、毎日食べたらどうなるのかなと疑問に思った。 「一箱食べて1億個。制限無しで食べ続けたらお腹の中は乳酸菌だらけやな。これで元気になれれば儲けものやな」 気がつくと、一箱まるまる食べていた。切れかかった蛍光灯のように、チカチカしていた葵の胃腸は元気ハツラツになった気がしていた。 外箱をよく読んでみると、5枚当たりに1億個。それが一箱15枚も入っていたので、3億個も摂取した事になる。 「大丈夫!大丈夫なはずや!お腹は元気の宝庫になっとるはずや」 明日の朝が怖い葵であった。
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