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ピッ!
仕事を終えて、タイムカードを切った葵は更衣室に入って、おもむろに着替え始めた。
「今日もヒマやったなぁ……ずっと続く雨の効果は絶大やな」
着替え終えて挨拶をし、店を出た葵は、駅構内のドトールへと足を進めた。
昨日から始めた「思いつき。」を更新するためだ。
「まだ雨ふってるなぁ。でも地下道いけば傘もささないですむわぁ」
蛇の道の様に風に吹かれている雨雲を横目で見送りながら、葵は地下に降り音楽を聴きながらスタスタと歩いていく。
「そう言えば、寄り道する子は不良やったな」
前日読んだジャリン子チエに書いてあった事を思い出した葵。
「そうや、うちは不良やねん」
ニヤニヤしながら歩いている葵は多少気持ち悪く写っただろう。サァーッと人混みが避けていくのを感じた。
ドトールに着くと、店は空いていて、喫煙席も客がまばらにいただけだった。葵はいつもの珈琲を注文し、喫煙席へと向かった。
「一度でいいから、いつもの!って注文したいなぁ。けっこう常連やし」
駅近くのコンビは葵の顔をみるなり、いつもの煙草を用意してくれる。
そんなに覚えられるような特徴的な顔立ちではないのだが、ありがたい事だ。
「まぁ、全然気にはしてへんから、えぇけど」
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