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僕が気を失う寸前に、祭壇の上側から強い光が射す。 右手の皮を剥がしていた司教が、その光で眼がくらんだのか、動きを止めて顔を手で隠した。 僕の眼には、はっきりとあの金髪と蒼銀色の瞳が見える。 はらりと血塗れの身体の上に、白い布が落ちてきた。 『何が祝福ですか。…帰ったらお仕置きですね。』 ああ。 冥神さまは我慢強いなあ。 …ハンマーだもんなあ。 そんな事を思いながら、意識を手放した。 意識が戻ったのは、どれくらい時間が立ってからだろうか。 僕の横には真っ赤な眼を擦っているラクレット。 「…姉さん…。」 「キラ!?気が付いたの!?」 そう言ってから、ラクレットは僕の顔を間近で覗き込む。 ラクレットの重さが加わって、古いベッドがギシリと軋んだ。 「…もう、泣かないで。」 「ごめんね、キラ。私のせいで。」 すぐに治せるなら、そうしてしまいたい。 でも、今の僕は無力な子供を演じなければならない。 ラクレットはずっと、この事を心の傷として抱えて生きていく。 それを取り除いてやれないのは、心苦しい。 「ごめんね、姉さん。」 「何でキラが謝るの?悪いのは私なのに。」 「違うよ姉さん。悪いのはあんな事をした奴だよ。姉さんは悪くない。」 届くだろうか。 僕の言葉はいつでも拙いから。 「でも。」 「それよりも姉さん。あの司教さんに何か言われなかった?」 「え?」 ラクレットが僕をじっと見る。 ああ。綺麗な色の瞳。 希少な宝石のような光が僕を見ている。 「どうして、知っているの?」 「…一人では生きていけないだろうって、大人は言うんじゃないかって思って。」 ラクレットがプッと頬を膨らます。 かわゆい。 「キラは時々、大人みたいな言い方をするのね。」 「そうかな。」 …さすがに、六歳の姉さんよりは上だと思えるけど。
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