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「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どいてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「っ!?」
不意に女の人の声が響いた。大声でもなく、小声でもなく、しかしはっきりと聞こえた。
ばっ、ばっ、と左右前後を確認。しかし人影もなく。誰にも声をかけられていないと判断できる。
「……?」
学校への行き道。一人で土手を歩いていたときのことだった。
いつもと代わり映えのしない、しかし桜並木がなんとも趣のある景色を形成していて、何を考えるまでもなく、歩きながらボーッと眺めていた。
「お前だお前ーーー!!あぶっ、危ないって本気でーーー!!」
「っ!?」
また聞こえた。女の人の声。
なんだろ。危ない?
何がだろう。ちなみに周りには人一人いないわけで。俺と同じ制服を着た生徒はおろか、よく見かける犬を散歩させてるおばあちゃんとかスーツ姿でタバコを吹かせながら歩くおっちゃんも見当たらない。
正真正銘俺一人だけの桜並木道。
「わっ!わっ!わっ!ぶつかる!!」
「ぶつかる?」
おそらく俺に向けられた言葉なのだろうと若干意識し始めた時、一番大きな声が頭上から聞こえた。
頭上?
「どこのどなたか知らんが!!すまぁぁぁぁぁん!!」
「ぼげぁ!?」
ドン!と急に頭上からそれなりの衝撃があった。ピンポイントで『何か』が頭の頂点に降ってきて、俺はそれに耐えきれずに顎から地面に伏した。
あまり体験することのない状況だとは思うけど、かなり痛い。
「ふごぉ……な、なんだいきなり……何が起きた……?」
「うわわ!?す、すまん!!位置まではまだ未知数なところがあって……というより、大丈夫か!?」
『何か』は慌てた風に声を発した。
状況が状況なだけに、割りと瞬時に今の状況を判断できた。
声の主は『何か』。しかもその『何か』は声からして女の子だ。その女の子は俺の頭部に馬乗りになって、バタバタと慌てながら、俺の心配をしてくれている。
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