プロローグ

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「期待はずれもいいところだ。ただの金持ちか」  装備は金があればいくらでも強くできる。 「まぁいいじゃん。こいつらの所持金は……と」  斎藤が炬燵の中で無線式キーボードを叩いた。画面をプレイヤーステータスに切り替えるようだ。 「うっお! すっげぇ~こいつら一人三十万リシェもってるぜ!」  リシェとはいわゆるゲーム通貨だ。一円で一リシェ。こいつらが高校生にしてかなり金持ちだと言うことがわかるだろうか。 「気にしなくて良いって言っただろ? 全滅させれば四五万だ」  ダンジョン内で全滅するとプレイヤーはゲームオーバー。そのダンジョンで得たアイテムやリシェは全て失われ、さらに所持金の半分を失う。その失われる所持金は、ダンジョンのモノとなる。つまり俺と斉藤のモノだ。  所持金半分を失うため、所持金のほとんどは倉庫へ預けてくるのが基本だ。こいつら三人がそうしない―実際倉庫に預けているリシェもあるだろうが―のには訳がある。 「所持金三倍に釣られる馬鹿が多くて助かるよな」 「おう。高い金出した甲斐があっただろう」  このダンジョンをクリアすると、つまり最終ボスを討伐すると、報酬アイテムの他に、彼ら全員の所持金は三倍になる。  これが、彼らが三十万も所持している理由。 「そろそろこいつらの低レベル戦闘も見飽きたな」 「お! しゃかいー、送っちゃう? 送っちゃう?」  何もしなくても復路の二階か、最悪でも一階で力尽きるだろう。それを待ったほうが利益はあるかもしれないが。 「ブロンズデーモンを送ろう。レベル15だ」 「うっは。15とかもうあいつら詰んだな」  言いながら斉藤はキーボードを叩き始める。  「おつかれーい」  エンターキーを押す。ダンジョンの総リシェが十五万減った。ブロンズデーモンの経費はレベル1に対して一万リシェ。ちなみにこいつら四人がやっと倒した三階の中ボスは、レベル1に対して千リシェのブロンズデビル。ちなみにレベル10だった。
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