第2話

経営者

　２０２０年以降急速に成長した技術、通称『シンクロ』により、ゲームは持ち運ぶものでもテレビ画面でやるものでもなくなった。

　２０２１年には、ゲームセンターにはカプセル型のゲーム機が並んだ。カプセルの中で首筋にコードを差し、ヘルメット型の機械を装着することで、自分がゲームの世界へ入り込んだかのようにプレイすることができるのだ。実装当初こそ、プレイ後に気分が悪くなるなどの症状が出ることがあったが、シンクロ技術は目覚しい進化を遂げていき、今ではパソコンに接続したゴーグル型の機械を装着すれば、何処でもシンクロプレイが可能になった。もちろん不調を訴える人などいない。

　それに伴ってオンラインゲーム戦争は過激化の一途をたどる。終結したのは２０３０年。勝者、いや勝社は『ＮＥＸＯ』という老舗オンラインゲーム会社だった。ＮＥＸＯの開発したオンラインゲーム、『ＫＣＳ』通称ケイクス一つで、日本国内にあった数十のゲーム会社は、ＮＥＸＯに吸収されるか潰れるかの二択となった。それほど圧倒的な人気を誇ったのだ。

　そして２０５５年現在に至るまで、その人気は衰えることなく、世界中でプレイされその登録ＩＤ数は五億と言われている。その超絶人気の秘密は、後ほど。