経営者

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 一応クラスの人気者的なポジションにいる俺は、顔を合わせた全員に挨拶をかわす。 「タハラ」  苗字を省略したあだ名を呼ぶと、ゴリラ顔の男が振り返った。 大田原だ。こいつは活舌は悪いし栃木育ちのなまりでイマイチ聞き取りにくいが、噂が大好きだ。十中八九騒ぎの原因を知っている。 「あ、おうおはようしゃくらぎ」  ちなみに大田原は活舌が悪すぎるため『さくらぎ』と発音が上手くできず、しゃくらぎになってしまっている。 「なんか騒がしいけどどうしたよ?」 「あ、あぁ。なんか隣のクラスの、加藤達いるだろ? あのボンボンの。あいつ らが昨日ケイクスで何十万もやられたとかって話でもりあがってんだよ」  思わず顔が歪んだ。昨日カモった馬鹿どものことでこんなに騒いでいたなんて。 「おれぁケイクスやってねぇからわからんけど、たかがゲームやろ。わ、わけわからん」  そうたかがゲームだ。他のゲームならな。  このゲームが世界一になった要因はいくつかある。  圧倒的なグラフィック。シンクロのズレの無さ。言い出したらキリが無いかもしれないが、それらは他がいくらでも真似できる。 『ゲーム通貨換金システム』  コレが、このゲームを五億人もの人がプレイする最大の要因だ。  現金をゲーム通貨に換える、いわゆる課金はどのオンラインゲームでもやっている。しかしKCSはその逆をやった。ゲーム内で稼いだリシェを、ネットバンクなどを使って換金することができるのだ。  ゲーム内で金を稼ぎ、強い武器を買うもよし。換金して他に使うもよし。この新システムが実装され、瞬く間にKCSは広がっていった。
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