0人が本棚に入れています
本棚に追加
この学校型ダンジョンはあえて、教室をスルーできる形状になっている。なぜなら正面玄関を右に曲がってすぐに、階段があるからだ。階段の奥に1年A~D組までの教室が並んでいるのだ。
これは俺達の通う学校そっくりに作ってしまったがための欠陥なのか。それとも何かの罠なのか。
「どうしますか? スルーしますか?」
「お前たち昨日はどうしたんだ?」
「あ、僕たちは昨日、一階は全部倒して、二階は全部スルーして、三階でどうするか悩んでたら中ボスが現れ……なんとか倒したところで」
「ブロンズデーモン、か」
トレイルは黙って頷いた。
すべての教室を制圧する必要はなさそうだ。
だがブロンズデーモンが、スルーしてきたがためのツケだったということも考えられる。
「よし。全制覇するぞ」
どれほど雑魚モンスターを倒してでも、デーモン級との戦闘は避けたい。
教室のドアを蹴飛ばして開ける。スライド式のドアだ。蹴飛ばして開けてことに意味はない。ただやってみたかっただけだ。
「おぉ~いるねぇ。でも目ぼしいのはいないな。トレイル! スパーダ! お前らここやっとけ!」
「え?」
「え?」
二人ともキョトン顔だ。
「俺は次の教室やっとくから、お前らこの教室やっとけって言ってるの!」
「あ、りょーかいです」
ほんとに大丈夫かこいつら。俺がやられなきゃゲームオーバーにはならないから万が一こいつら二人がやられても平気だが。
二人の加藤に背を向け、一年B組のドアを蹴飛ばす。
「!」
ドアが開いた瞬間、目の前が赤と白で埋まった。赤はおそらくモンスターの口内。白は牙だ。いきなり突っ込んでくるとはいい度胸だ。
切り捨てながら教室に侵入すると、俺の後ろの床は赤く染まっていた。
「なるほど。ここはゴブリンゾーンってわけか」
教室中にいるのは緑の小さなモンスター。下級モンスターのド定番『ゴブリン』だ。爪と牙の攻撃力は高いが、知性はほとんど無いと言える。リーダー格のモンスターがいない限り統率のとれた動きを見せることはない。
俺の一閃で倒せたことを考えれば、それほどレベルも高くないはずだ。
つまり何匹いても俺の敵ではない。
最初のコメントを投稿しよう!