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授業が終わり、目を覚ました四谷琉聖は教室を出ていった。
彼の姿が見えなくなると同時に、前の席の男子が勢いよく僕の方を振り返った。
「雪下、おまえすごいな……」
すごい、?
「あの四谷琉聖に注意するとか。聞いてるだけではらはらしたわ」
「えっと、ごめん……?」
どう答えていいか分からず、はらはらさせたことについて僕は謝った。
四谷琉聖を起こしてはいけない、というのが暗黙の了解となっていることを、僕はこのとき初めて知った。
恐ろしく寝起きの悪い四谷は、普段は他人に絡んだりはしないが、寝ているところを起こされるとガチ切れするらしい。
「つか、そんなの知らなくても相手が四谷だったら、普通寝ててもほっとくだろ」
僕は曖昧に頷いた。
四谷琉聖に声をかけた理由は、自分でも上手く説明できる気がしなかった。
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