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動揺を抑えるために、ゆっくりと長く息を吐く。 「四谷……、四谷琉聖?」 「そう。俺、四谷と大学が同じで」 「そうなんだ……」 「学部も一緒だったんだよ。経済学部。まあ、向こうは俺のこととか知らないと思うけど。四谷は、ほら、目立つし」 「大学でも目立ってたんだ」 「そうそう。見た目があれだし、女関係の噂とかもすごかったし」 へー、と返す声が、ひどく冷たいものになってしまった気がする。取り繕うように僕は言葉を重ねた。 「噂って?」 「高校のときとそんな変わんないと思うけど。誰々と付き合ってる、って話が出たかと思ったら、すぐ別れてたり。身体だけ、みたいな相手が常に何人かキープされてる、って話も聞いたな」 「それ、ただの噂だったりしない?」 「いや、本当らしいよ。サークルに四谷の元カノがいて、愚痴を聞かされたこととかあるし。まあ、一週間しか付き合ってないらしいから、元カノって言っていいのか分かんないけど」
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