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苛立ち、焦燥、不安。 いくつもの思いが、僕の内側に立ち込めていく。 それは、本当に過去の話なのだろうか? もしかしたら、今も。 彼が求めているものが、身体の関係だけだということはないだろうか……? 「雪下?」 宮城が、僕の顔を覗き込む。 「どうかした?」 何でもない、と僕はアルコールを口に含んだ。 「何か、すごいなと思って……」 「だよな。あれは真似できないなって思うよ」 宮城の苦笑いに、僕も同じ表情で応えたが。 ぽたりぽたりと、胸の内に黒い雫が落ちていくのが分かった。
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