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「あ、それと、高田って覚えてる? 野球部の。あいつ来年結婚するらしいよ」
「へえ……」
高校の同級生の近況に耳を傾けるが、正直ほとんど頭に入ってこなかった。
四谷に会いたくて仕方ない気持ちと、真逆の気持ちとが、同時に沸き起こる。
彼の恋人になると決めた夜。
身体だけの関係でも構わないと、想いが伴わなくてもいいから手に入れたいと、僕は自分に嘘をついた。
僕がもっと上手に自分を偽れていたなら。
そうしたら、四谷が過去に何人の女性と付き合っていようと、身体だけの関係を結んでいようと、気にせずに済んだんだろうな……。
………………
宮城と別れた後。
僕は「仕事が忙しくて、しばらく会えない」という旨のメッセージを四谷に送った。
もしも、と僕は考える。
もしも誰かを抱きたくなったら、四谷は他の誰かのところに行くのだろうか?
僕以外の誰かに甘い声を上げさせて、限界まで追い詰めて、腕に抱いて眠るのだろうか──
自分から距離を置こうとしているのに、四谷の側に自分以外の人間が来ることを不快に感じる。
自分は、どうしようもなく屈折しているのだと思った。
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