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横断歩道の先に、カーキ色のアウターを着た小柄な女性の姿を見つける。 僕は信号を渡り、手を振る彼女に駆け寄った。 「久し振り。ごめんね、待たせた?」 「ううん。そんな待ってないよ」 小一時間残業したので、時刻は七時前。夕食は食べたのか尋ねると、彼女は首を横に振った。 「わかちゃんと食べようと思って」 「そっか。何食べたい?」 「ラーメン」 「そんなんでいいんだ」 「うん。ラーメン、おいしいよ」 昔から、小柄な割によく食べる子だったな、と懐かしく思い出す。 「桃ちゃん、前行ったとこでいい?」 彼女の了承を得て、僕は行き慣れたラーメン屋へと向かって歩き出した。
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