2711人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず注文を済ませ、一息着くと。
「わかちゃん、これ」
バッグの中から、濃いブルーの包みを取り出す桃ちゃん。袋の口は、赤いリボンでかわいらしく結ばれている。
「あたしと緑から」
「うわ、ありがとう」
中から出てきたのは、ダークブラウンの手袋。これからの季節にちょうどよい贈り物だった。
思わず、表情が緩む。
「わかちゃんは、相変わらず美人さんだね。笑顔が、綺麗」
「何言ってるんだか……」
「ちょっと早いけど、お誕生日、おめでとう」
「ありがとう。嬉しい」
不意に、四谷のことを思い出す。
四谷以外のひとにだったら、お礼を告げることも、気持ちを表すことも、別に難しくなんかないのに。
彼の前でだけは、唐突にいろんなことが難しくなる。
最初のコメントを投稿しよう!