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「……そういえば、緑がね」 話を振った段階で既に笑い始めている彼女に、僕は先を促した。 「緑君が?」 「最近、お見合いさせられそうになったんだよ」 お見合い。 緑君が。 「え……っ、ほんとに?」 二十五歳。適齢期といえば適齢期なのかもしれないが、やはり早いような気がしてしまう。 「それ聞いたときには、思わず笑っちゃったよ」 そのお見合いの話を持ってきたのは、桃ちゃんと緑君の父方の叔母さんだったそうで。 同じ習い事をしていて親しくなった女性から、娘の相手に誰かいいひとでもいたら紹介してほしいと頼まれ、緑君に思い至ったのだとか。 「携帯に入ってた緑の写真を見せたら、そのお友達が乗り気になって、一度会ってみないかって話になったらしいよ」 「へー……」 「結局、その話は断ってもらったみたいだけど」 「そうなんだ」 「今はまだ、お見合いで一生の相手を決める気になれなかったんだと思うよ」 先のことは分からないけど、と補足して桃ちゃんは笑った。
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