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鍵を開けて、部屋に入った途端に。 「あ……」 携帯の振動が、衣服越しに身体に伝わってきた。靴を脱ぎ、玄関先に鞄を置き、コートのポケットから携帯を取り出す。 ──四谷琉聖。 最近会話していなかったので、妙に緊張してしまう。深呼吸をしてから電話に出た。 「……もしもし」 『若葉』 二週間振りに聞く彼の声が、僕の名前を紡ぐ。重く、甘く、身体に響く。 『今どこにいんの?』 「え?」 『誰と、どこにいる?』 「ひとりで、自宅にいるけど……」 平日の夜は、四谷と会う以外で外出することはほとんどない。それは彼も知っているはずだった。
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