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「四谷、さっき駅にいたの?」 『……』 四谷が何も言わなくなってしまったので、その間に僕はリビングへと移動した。電気を付け、エアコンの電源を入れる。 「よつ……」 『他のやつと、するのかと思った』 「は?」 『否定、しなかっただろ』 ──俺以外の誰かとは、するって意味? ──さあね。 ああ、あのとき……。 確かに、否定はしなかったけれど。 「他のひとと、とか。するわけないだろ」 付き合っている相手以外のひとと、関係を持ったりしない。 四谷が僕のことをどう思っていようと、僕は四谷以外のひとに抱かれる気はないし、抱く気だってない。 言葉にして伝えたことはないかもしれないが。 「……それくらい分かれ、ばか」 電話でよかった。 きっと今僕は、人に見せられない顔をしている。
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