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「声をかけてくれれば……」 『電車の時間が迫ってたんだよ。塾の方を村上に任せてたから、遅くなるわけにも行かねえし』 村上というのは、四谷の塾に勤めている事務の男性のことだろう。何度か話題に上ったことがある。 「まだ、仕事中?」 『ああ。授業は、村上とか他の講師とかに任せてるけど』 仕事中に職場を一旦離れて、わざわざ僕に電話する四谷の姿を想像して、僕はふふっと笑った。 『何だよ』 「何でもない」 今なら、訊けるだろうか。 僕は静かに息を吐いた。 「……四谷は?」 『え?』 「四谷は、他のひととその……、そういうこと、しない?」 『そういうことって?』 「だから、えっと、……えっち、とか?」 口にするだけで恥ずかしい。 でも、ずっと知りたかった。以前は複数の女性と関係を持つこともあったという彼が、今はどうなのか。
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