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不意に目の前が真っ暗になったような錯覚がして。気付くと僕は、彼に向かって手を振り上げていた。
乾いた音と、右手に感じる微かな痛み。
人に手を上げたのは、それが生まれて初めてのことだった。
「……若葉」
四谷の声。
この声が、いつだって僕をおかしくするんだ。
「他のやつとは別れたって、言ったじゃないか」
初めてついでに、剥き出しの感情を吐露すると、四谷が困ったように眉根を寄せた。
「若葉、彼は違う」
「もういい、聞きたくない」
解っている。四谷には、僕に責められる謂われなどない。
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