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「村上には、買い物に付き合ってもらっただけで。別に何もないから」
こくりと僕は頷く。疑念は既に霧散していた。
「疑ったり、叩いたりして、ごめんなさい」
そっと、彼の頬に手を伸ばす。心なしか、叩いた箇所が熱を持ち始めているような気がして、僕は唇を噛み締めた。
「痛かった……?」
「大したことない」
「本当に、ごめん」
痛くはなかったけど、と四谷は言った。
「驚いた。若葉は、気にしないと思ってたから」
「え……?」
「俺が誰といようが、何をしようが、気にならないんだと思ってた」
彼の瞳の奥の光が、頼りなく揺れた。
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