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微かな寝息を立てて眠る、綺麗な横顔。
広い背中をまるめて机に突っ伏す様子は、獣が昼寝でもしているかのように見える。
緩く纏ったシャツの隙間からは、赤く鬱血した痕が見えた。
「四谷」
小声で呼びかけるが、返事はない。
「四谷琉聖」
再度名前を呼ぶと、彼は姿勢を変えずに言った。
「何」
何、じゃない。
「……授業中。英語」
むっとしたのが、声にも表れていたのだろう。
四谷琉聖は、低い声で笑った。
「Thank you for your kindness.」
流暢な発音に、僕はそっと溜め息をついた。
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