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「うむ。水上君、お手柄だ! よく頑張ってくれた。ありがとう。いや、花村さんもだ。ありがとう」
久保田教授は立ち上がり、水上と霞へ交互に礼を述べて破顔した。彼の頭髪は白髪が半分以上を占めている。
久保田は2015年1月まで、T大学の大学院に於いて天文学の講義を続けて来た。
一方で独自の研究に多大な時間を費やした。
観測画像から星表にある既知の星を一つひとつ消しながら、画像に残った微かな光を精緻に解析したのだ。
水上と花村は院を卒業後、久保田教授の研究助手として採用された。
二人は研究室で、気の遠くなるような作業を繰り返し、画像解析を担って来た。
水上純太は花村霞より2年先輩にあたる。
「いったい何があったんですか?」
霞がきょとんとした表情で問いかけた。
コーヒーには誰も手をつけずにいる。
「先生! いいですか?」
水上は久保田教授へ承諾を求めた。
「うむ。水上くん、もういいだろう。花村さんに説明してやってくれたまえ。いずれ論文作成には花村さんの力を借りる事になる」
「はい!」
水上は霞の方へ向き直った。
「結論から先に言おうか? それとも順を踏んで説明しようか?」
「順番にお願いします」
霞は迷いなく答えた。
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