永遠の謎

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「その後、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線観測から、太陽の数百億倍という大きな質量をもつことがわかった。しかしだ。2014年から稼働した最新鋭のアルマ電波望遠鏡が新しい事実をもたらした。ヒミコは銀河ではなく巨大なガス雲だと判明した」 水上は熱く語る。 「だが、これほど巨大なガス雲を高温で輝かせるそのエネルギー源については謎のままだ」 「でも、ヒミコの中に、三つの大きな天体があるんでしょ? 研究チームのメンバーで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのマシュー・アシュビー博士は《ヒミコの中で、1年に太陽質量の約100倍におよぶガスが星に変わっている》と言ってるわ。《おそらく、この激しい星形成活動が巨大で熱いヒミコを覆うガスを温め続けているのでしょう》と。これって星が造られているんじゃないの?」 霞は疑問を投げかけた。 「いや、そこが謎なんだよ。アルマ電波望遠鏡の観測では、星の形成に伴う固体微粒子が放つ電波や炭素原子が放つ電波が全く検出されなかった。つまり星は無いんだ。星が形成される前の状態だと言うんだ」 「まあっ! 同じ研究チームなのに言ってる事が違うじゃないの」 「そう。観測結果をどう解釈するかって事だよね。誰にも悪意はないし、見解の相違はどんな場合でもある」 水上は久保田教授を視た。 久保田教授は腕を組み眼を閉じて二人の会話を黙って聞いている。
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