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再び距離を開けて、シルフさんの動きに集中する。
すると再びシルフさんはスローモーションで動くようになった。
「どうやらそう言う事みたいだな。」
集中力を上げると自分の中の時間が加速するらしい。
「そう言う事なら。」
一気に距離を詰めて鎧に包まれた腹に拳を見舞う。
どんな素材で作られているのかは解らないが、俺の拳は鎧をバリバリと破壊してその生身の肉体に突き刺さった。
そしてその瞬間に俺は集中力を解いた。
シルフさんはものすごい速さで壁に激突して壁を突き破り、客席に突き刺さって止まった。
「し、死んでないよね?」
「どうでしょう、普通の人間なら死んで居てもおかしくはありませんが・・・。」
何せ初めて力を確認したばかりで力加減がわからなかった。
「セラ、回復魔法が使えるならちょっと回復してあげて。」
「はい、ヒールライト!」
客席に突き刺さっているシルフさんがきらきらと光る。
でも動く気配がない・・・。
「や、やばいかな?」
「回復は効果があるみたいですし、気を失っているだけだとは思いますけれど。」
近づいたらまた襲われるのではないか?と言う恐怖から近づく事ができないが、シルフさんの安否も気になる。
そろそろと忍び足で近寄って、息があることを確認、再び忍び足でセラの元に戻ってきた。
「生きてた、息してた。」
「そうですか、良かったですね。でもなぜ小声で?」
だって起きたらまた襲われるかもしれないし、恐いじゃん。
「それにしても、身体強化は使えるんですね?」
「何それ?魔法で身体を強くする奴?」
「そうです、しかし部分強化が出来るのは凄い事ですよ!」
「した覚えがないんだけど?」
「さっきの動き、完全に身体強化によるものです。そうじゃ無いとパンチだけであんなに遠くまで人は飛びませんよ。」
なるほど、あれは魔法だったのか。
「最初はセラがやったんだと思ったんだけど。」
「違いますよ、男同士の戦いに横槍を入れるのは無粋だって、漫画に書いてありました。」
こうして俺は初めて魔法と言うものを使った。
しかし、使い方自体は良く解っていない。集中したら出来た。それしか解っていない。
とにかく魔法を使う事ができたのだった。
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