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ある日、山の中、熊さんに、出会った・・・。
そう、出会ってしまった。
それは見た事もない虹色の毛並みで、全長は3m。
どう見ても普通の熊ではなかった。
「な、何だこいつ・・・。」
その呟きは最もだろう。
俺だって何だこいつと思う。
明らかに普通じゃ無い見た目だし、いくら熊だとは言え素人でも解る位の殺気を放っている。
「皆逃げて、こいつは普通じゃ無い!!」
そう叫んだのは俺達の班の班長、名前は橘 勇樹だ。
イケメンで、頭が良くて、運動神経が良い、そんな三拍子そろった俺の幼馴染。つい最近彼女なんて物を作って本当のリア充に仲間入りを果たした。
「卓真、皆を頼むよ。」
「知るか、班長はお前だ、お前がまとめろ。」
勇樹の首根っこを掴んで佐々岡 恵(勇樹の彼女)に押し付ける。
「お前には死んだら悲しむ奴が居る。それに運動神経もお前のほうが優秀だろう?さっさと教師に連絡して来てくれ。」
「卓真が死んでも悲しむ人はたくさん居るよ!」
そんな事は解ってる。
親兄弟、それに幼馴染である勇樹。
「良いからさっさと行けよ!頼むから!頼むからこれ以上、俺に未練を残させないでくれ!!佐々岡!!勇樹を頼む!」
佐々岡は解ったと頷いて勇樹を連れて行った。
愛する友のための犠牲に、これ以上後悔を残したくはない。
これで良かったんだ・・・。
熊の方はと言えば、俺達の臭いやり取りが終わるのをじっと待っていたようだ。
「くっ!!」
恐怖と悲しみで溢れる涙をぬぐい、その辺の木の棒を拾って構える。
無意味である事は解っていたけれど、それでも、少しでも勇気を振り絞るために、どんなに弱いものでも、武器が欲しかった。
熊の方も立ち上がり臨戦態勢、勝負は一瞬で終わるだろう、俺の死という結末を持って。
「うぉおおおおおお!!!!!」
叫びながら木の棒を振り回す。いや、振り回そうとした。
しかし木の棒は腐っていたらしく、振り上げた所で折れてしまった。
「くそがぁああああ!!!!しまっ・・・」
叫び終わるか終わらないか、その瞬間には俺の目の前には熊の爪が迫っていた。
ボキィ!!という音を最後に俺の意識は途絶えた。
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