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俺の顔がすっかり綺麗になって満足したセラがハンカチをしまっていると、どこからとも無く悲鳴が聞こえてきた。
「テンプレ、とりあえず助けに行こう。」
「どこかの王女様でしょうか?」
「まぁ、テンプレ通りならそうかもね、どんな人だとしても、助けるけどさ。」
悲鳴の聞こえた場所まで走ると、筋肉ムッキムキのオカマが盗賊を襲っていた。
「た、助けなきゃ!?」
「おら盗賊如きが舐めんじゃねぇぞ!タマ取ったらぁ!!」
「ひぃいい!!!助けてくれぇえええ!!!」
「ええ!?あれむしろ盗賊を襲ってますけど!?」
「盗賊さんを助けなきゃ!」
怒り狂いバーサーカーと化しているオカマを宥め、もうヤダ盗賊辞めると涙を流す盗賊を励まし、何とか場を収めた。
「私は薬草を摘みに来ただけだったのにそいつらが急に襲ってきたのよ!」
オカマが盗賊を指差してそう叫ぶ。
「ひぃい!!」
盗賊たちはそれに怯えて皆で小さくなり震える。
「取られた物がないのであれば、今回は許してあげてくれませんか?お前らももう悪い事はしないよな?」
「も、もちろん!盗賊なんて辞めて全うに働くさ!」
「しょうがないわねぇ・・・こんかいだ・け・よ(はぁと)」
俺も戦慄した、流石のセラも引き攣った笑顔で冷や汗を流している。
オカマさんはじゃーねぇと手を振ってどこかへと消えていった。
「きょ、強烈でしたね・・・。」
「ああ、恐かったな・・・。」
地球に帰りたくなってきた。
「ありがとう!あなたは命の恩人です!すぐそこにアジトが有るので是非お礼をさせていただけませんか?」
「えぇ・・・。」
「よろしいでは有りませんか、無碍に断るのも失礼になりますし。」
その後俺とセラは盗賊のアジトに招待されてご飯とお茶を振舞われ、手土産にと剣を一振り渡された。
「こんな展開ならテンプレでも良かったのになぁ・・・。」
「何を言っているんですか、人助けには違いありませんよ。」
アジトを出て森を抜けるとすぐに街道に出た。
「あっちがノレイド帝国で、こっちがシュレー王国か。」
「どちらになさいますか?」
「シュレーに行こうかな、ノレイドの方は途中で野宿になりそうだ。」
盗賊の人に貰った服に着替えて黒いマントを羽織る。
セラはなぜかメイド服を着て俺の後ろを歩いている。
「長閑ですねぇ・・・。」
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