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──誠司。
あった。
躊躇うことなく、
発信ボタンを押す。
3コール目で誠司が出て、
ほう早いなと思った。
『なんだよ、志緒』
えらく優しい声で、誠司が言う。
何だか悪いことを
しているような気がして
(いや実際悪いんだが)、
思わず黙ってしまった。
『志緒?』
訝しむ誠司の声に、気を取り直す。
「──悪いな。俺だ」
『え……』
一瞬で、電波越しに緊張が走る。
走らせたのは、俺じゃない。
「志緒なら、俺の寝室で寝てる」
我ながら最低な
セリフだなと思った。
だが、一生に1回くらい
言い放ってみたいセリフの
ひとつじゃねえか、これ。
志緒を誰かと取り合うなんて、
もう二度とごめんだが。
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