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『……何の悪戯だよ。
ほんと、たちが悪いよね』
「たちが悪いのは
否定しないし認めるが、
お前ほどじゃねえ。
お前、よくも俺を謀りやがったな」
『……』
だんまりだ。
誠司に限らず、
男ってもんは準備もなく
ずばりと真実に斬り込まれると
言葉を失う生き物だ。
だからこそ、
普段は明言を避ける傾向にある。
「お前の心ない嘘のおかげで、
俺は今の今まで煮え湯を
飲まされ続けてたってわけだ」
俺がすらすらと言葉を続けると、
一瞬の間のあと誠司も口を開いた。
『──俺、謝らないよ』
「へえ」
『志緒をあっさり
さらっていっただけじゃない。
兄さんとの因縁は、
俺が生まれた時からだ』
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