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「俺がまんまと騙されて、
志緒のこと置き去りにしてった
あとだってそうだ。
9年だぞ、9年。
せっかく志緒をくれてやったのに、
何してやがった」
言いながら、ちくちくと胸が痛む。
『……こっちだって、
色々事情があったんだよ……』
「てめえの兄貴
騙くらかしておいて、
何ヌルいこと抜かしてやがる。
あいつが泣こうが喚こうが、
付け込んでやれば
よかったじゃねえか。
志緒はあれでいて情の強い女だ。
お前が本気だと判れば、
覚悟決めて受け入れただろうよ」
──もしもの話になんて、興味はない。
だが、それについては確信できた。
誠司が陰でこそこそと
何をしていようが、
そんなもの志緒の耳に
入らなければないのと同じことだ。
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