乾いた身体を潤して

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  『……それでも謝らないよ、俺は』 「だろうな。結局お前は、 自分の手を汚すのを嫌う、 臆病なイイコちゃんだからな」 『……』 「いいかげん、認めろよ。 志緒のために俺が何をしてきたか── お前、全部見てきたから 知ってるだろ。 だから、 兄貴の女に手を出せなかったんだろ」 『……うるっせーよ』 らしくなく荒れる、誠司の口調。 『俺は……俺は、 志緒の傍にいられればそれでよかった。 兄さんにはヌルい 9年かも知れないけど…… 俺にとっては、穏やかで かけがえのない時間だった』 「この期に及んで嘘、吐くなよ。 ……そんな謙虚なやつが、 俺が現れたくらいで慌てるわけねえだろ」 .
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